- ナノ -


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 まだ幼かったその国の王女は、厳格な城での暮らしに耐えかねていた。何度もこっそり城を抜け出した。向かう先はいつも、街の小さな広場。他に顧みる者もいない仔竜の世話を焼き、一緒に遊ぶ時だけは、心の平穏を取り戻すことができた。
 しかし、終わりは突然だった。城の外で竜と会っていることがばれてしまったのだ。竜は国から追い出され、王女は城の外に出られぬよう、見張りが強化された。
 王国の門の外では、竜が王女を呼ぶ悲しげな声が響いていたという。


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