- ナノ -


505

 暮らす場所、使う者、時代によってさまざまに生まれて変化していく人間の言葉は、まるで人と共に生きているようだと竜は思う。それ故確かに、意思疎通の特別な力を持たない竜が網羅的に学習するのは困難であることが多い。竜のようにひとつの言語しかないのならわかりやすいが──しかし、複雑で、多様で、時には思わぬところで絡み合う。だからこそ、人間の言葉はおもしろいのかもしれない。


[