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 正気か、と彼の周りの人間は口を揃えて言った。竜は架空の生き物だ。それを本当に存在したものと証明するため、研究するなんて。
 その度彼は短く頷いた。そこで議論するくらいなら、彼は一分一秒でも長く竜に関する資料を集めて考察を進めたかった。彼らがいて、いなくなった。そこに人間の一側面も隠されている気がしていた。竜を研究することは、彼にとって、人を研究することでもあったのだ。


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