- ナノ -


489

 どこかあたたかくさえ感じる雪だった。ふわりと空を舞って、積もる。そのひとつひとつを、彼女は思い出のようだと言った。儚いけれど、かけがえのないもの。積もって積もって、銀の大地ができるように、今の私がいるのだとも。
 彼女にとっての雪のひとひらになれただろうか、と竜は思った。竜にとって、彼女は──ひと際輝く、雪の結晶だった。


[