- ナノ -


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 何故かはわからない。気がつくと、うまく翼を動かすことができなくなっていた。昨日まではいつも通りに飛べたはず。それなのに、今では。
 不器用に羽ばたいては地面に転がった。まるで、まだ空を翔けることを知らない仔竜のように。土とちぎれ草に塗れた竜を、夕焼けの赤い光が照らす。慰めるようにも、呪うようにも思われた。


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