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 雪だるまが動いたって? うんうん、と首を何度も縦に振る人の子に、竜は怪訝な顔をする。昨日作った、子の身長ほどの小さな雪だるまは、溶けることなく今も立っていた。やはり何事もない、と竜が人の子に言おうとしたそのときだ。もぞり。雪だるまが揺れ、そのまま、あたりを飛び跳ねだした。ははあ、と竜は事の次第を察して笑う。そして雪だるまに声をかけた。いたずらはほどほどにな。
 果たして、雪だるまの中から小さな氷竜が顔を覗かせた。人の子が目を瞬かせる。氷竜はぴい、と鳴き、雪だるまをきれいに直すと、そのままどこかへ飛んで行った。


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