- ナノ -


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 別の街に仕事を見つけて引っ越しちゃったあのこ、元気かなあ、と彼女は窓の外を見ながら言った。寒々とした空は、しかし、空気が澄み切っていてどこまでも青い。ドラゴンさんは、会いたい誰かとかいないの? 振り返って、竜に問う。
 森で暮らしていた白竜に、と竜は呟いたようだった。だが、すぐに首を振り、押し黙った。それきり、彼女は竜の口からその白竜の話を聞くことはなかった。


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