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 竜の言葉はほぼひとつしかない、と竜。それに対して、人の言葉は多種多様だ。中には言葉を介さず、直接心を交わすことによって、人の言いたいことを理解できる竜もいる。それはすごいね、と彼は目を丸くした。君もそうなの? 竜は静かに首を横に振った。わたしは、長く生きていろいろな人やその言葉に触れてきたから、その分わかる言葉も多いというだけだ。ただ──竜はそこで少しにやりと笑った──わたしには人の言葉を発することはできない。え、それって……? 彼はさらに驚いたように、竜をまじまじと見た。


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