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 灰白色の鱗を持つ彼は、竜の三、四倍は裕にあろうかという巨大な体躯を持っていた。人間や、同じ竜でさえ喰らう竜種である彼を、多くの者が恐れていた。
 残酷だと思うか、と彼は言った。竜は首を縦にも横にも振らなかった。正直なところ、受け入れ難い気持ちはある。けれど、わたしも他の動物や魚を食べることがあるのだ。どうしてそれと違うことがあろう。
 おまえは変わっているな。彼はにっと笑い、竜に背を向けた。もう行け、とでも言うように。
 飛び去る直前、彼の後ろに、複数の仔竜の姿が見えた。腹が空いたのか、しきりに鳴いて彼に体を擦り寄せていた。


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