- ナノ -


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 忘れられたら困るのよ、と彼女は言った。私は竜のお医者さん。たとえ竜と人が喧嘩してようともね。
 蹲る竜たちを、何の迷いも躊躇いもなく、手早く治療していく。その手は温かくて優しい。かつて綺麗だった診療所の壁は崩れ、天井はところどころ落ちている。それでもここは今も、この上ない光に包まれているように、竜には思えた。


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