- ナノ -


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 人としての誇りを失うくらいなら、いますぐいなくなった方がましだ。殺せ。そう竜に頼んだ人間がいた。
 どんなことがあっても、生き延びれば、きっと光差す日が来る。だから、チャンスをください。そう竜に頼んだ人間がいた。
 わたしには、誰かの生死を決めることはできない。竜はただそう言うだけだった。ふたりの人間がその後どうしたのか、誰も知らない。


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