- ナノ -
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真っ暗闇のなかに独りで立って、微かな星あかりを浮かべていく。お話を書くのってそんな感じかな、と彼女は言った。あたしの書くものなんて、ちっぽけでいまにも消えちゃいそうだけど。でも、誰かがふと目にして、なんとなく懐かしいなとか切ないなとか思ってくれたらってさ。
薄く広がった夜の雲に包まれ、優しく光る星々。その下を飛びながら、竜はいつかの彼女の、そんな言葉を思い出していた。
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