その7
- ナノ -



先生の配慮 7

 そうやって宣伝に悪戦苦闘しているうちに、空き缶集めの三日前がやってくる。おにごっことか、けいドロとか、なわとびとかで元気に遊んだり、教室でゆっくりしたりしている人たちの中、私たちは担当の学年のクラスにそれぞれ空き缶入れの袋を配って回る。前日に配るよりも二日前に配っておいた方がよく集まるからだ。その袋にはちゃんと、アルミとスチール用の二種類がある。普段、集めた空き缶をためておく倉庫の中に入れてあるその袋は、もちろん繰り返し使う。小学生の低学年なら一人入れるくらいの大きさ。その袋がまた、たまによく洗われていない空き缶を入れてあったりするため、ベタッとした感じがするのだ。運が悪ければつんとくるアルコールのにおい。無論、集めた空き缶の大部分はお父様方が飲むビールの缶だったからである。まあ、倉庫の中のむされたようなアルコールのにおいよりもよっぽどましなのだが。
 どの袋がどの学年に配られたのかをはっきりさせるために袋の一枚一枚に配る先の学年とクラスを書いた紙をはりつけて、後は各自が配るだけだから、昼休み中に仕事をするわけであるが、この日はそれほど苦労しない。問題は空き缶集め当日、である。
 持ってきてもらった空き缶は、クラスでたいてい朝に集められて、私たちが配った袋の中に入れてある。だから活動時間はもちろん昼休み。重い足を引きずって、二日前に配った空き缶袋を回収しにかかる。これがまた、重いのだ。根性が入ってたくさん缶を持ってきてくれたクラスの袋なんか特に。大きさ自体大きな袋に、空き缶がぎっしり。持ち上げればずっしりとくる。それくらい集めてくれるクラスが学年に一組は必ずあるものだ。整理をするために理科室前のホールへ向かう私たちは、今度は重い空き缶袋を引きずっていた。


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