その6
- ナノ -



先生の配慮 6

 そんな環境委員会の仕事のメインが「空き缶集め」だった。手間がかかり、一番大変な活動であるが、小学校にしてはわりと大きな環境活動だ。
 全校生徒に家から空き缶を持ってきてもらい、それを集め、最後には業者さんの空き缶プレスカー(数ヶ月に一度くる)で空き缶を押し固め、いくつもの四角い「アルミのかたまり」を作る。そしてこのけっこうな重量がある「アルミのかたまり」はやがて業者さんに送られて、再びアルミとして利用されるわけである。スチール缶は別に集められるが、それも再利用する。
 この空き缶リサイクルの過程を支えることが、私たち環境委員会の大きな役目。毎月一度、全校生徒から空き缶を収集するのだ。それだけ聞くと全然大変そうな感じがしないかもしれない。しかしこの活動、やってみると案外つらい。仕事が空き缶集め当日だけにとどまらないので、なおさらである。
 まず、事前のお知らせが必要だ。これがないと空き缶集めの前日にいきなり「明日空き缶集めます」なんていっても、ほとんど集まらない。
 方法は主に二つあった。一つは環境新聞に次の空き缶集めの日にちを書いておくこと。もう一つは、お昼の放送で直接生徒たち全員にお知らせすること。
 1つ目の方法は、なかなか文でうめきれない環境新聞の行かせぎをするのにもかなり有効な手段だった。手軽にできる宣伝だし、だいたいいつも新聞の最後まで文がうまらないので、決まり文句のように毎号書いていた。しかしこの方法には一つだけ欠点がある。新聞をみてくれる人があまりいなかったのだ。全校生徒分記事を刷って、一人一人に配布すれば、まだ少しは気にかけてくれる人もいたかもしれない。だが、画用紙に手書きで文を書き、それをそのまま学校の主要な場所にはるという方法を私たちはとっていたのだった。その一枚が昇降口の前の窓にはられていた。完全に風景に同化してしまい、あまり生徒の注意をひかない。時々立ち止まってくれる人もいたが、空き缶集めの日にちまでわざわざ覚えていってくれる人はそういなかっただろう。
 そういうことで、空き缶集めのお知らせはお昼の放送が一番効果的だ。空き缶集め当日がくる前に、何日かお昼の放送でお知らせをさせてもらう。もちろん放送委員の人にまかせるわけではない。お知らせをするのも、ちゃんと各委員の仕事だ。私も五年生の間に一度だけやったことがある。音読が好きで、得意だった私もこのときばかりはかちかちに緊張した。なにをかくそう、私が通っていた学校では昼食をランチルームに集まって食べていたのだ。そしてその部屋の一番奥にお昼の放送用の放送器具がむきだしにしておいてあった。つまり、全校生徒の目の前で放送しなくてはいけないということである。足がふるえてしゃがんでしまうかと思った。放送委員の人には本当に頭が下がる。少し興味があっただけに、悔しいほど感心した。


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