- ナノ -


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 竜が来たことには目もくれず、彼は一心不乱に書きものをしている。何を書いているのか、竜はそっと尋ねた。彼は言った。もう二度と人と竜とが争わないように、これまでのことを書き留めているんだ。
 彼に竜を怖れる様子はない。竜はその場を離れると、空を仰いだ。いつまで続くともわからない戦いが、少しでも早く終わることを祈った。


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