- ナノ -


283
 
 目元まで隠れる、大きな麦わら帽子。その帽子をかぶり、熱い太陽の投げかける視線を避けるように、女性がひとり、浜辺を歩いていた。彼女をぼんやりと見ているうちに、竜はつい眠りこんでしまった。ふと目覚めると、頭がなんだか少し涼しい。手を遣ってみて、あの麦わら帽子がちょこんと頭の上に乗っていることに気づいた。名前も知らない彼女が、どこかで微笑んだような気がした。


[ ]