- ナノ -


285
 
 そこから無事に戻ってきた人々は口々に言った。昼も夜もわからないほど鬱蒼と草木が生い茂った森の奥に、ほの青くひかりを放つ鱗を持った竜がいたのだと。珍しさにその竜を捕まえようとした者もいた。しかし、その青い輝きは人の心を惑わせ、気がつくと森の入り口まで戻ってしまっているのだという。森の奥から帰ってくることのなかったわずかな人が、いまごろどうしているのか。それは誰にもわからない。


[ ]