- ナノ -
271
蒼天に花びらを閃かせていた桜も、いまや、かすんだ色を残すばかりである。春は駆け足で過ぎてゆく。竜は桜の並んだ道にそっと降り立った。すっかり花の散ってしまった木々に、しなやかな若葉が顔を出している。そっと顔を寄せた。早くも、夏の清々しさが匂い立つようだった。
[
←
〇
→
]