- ナノ -


270
 
 おかしいと思わないか、と彼は言った。気だるげに机に突っ伏していた彼の友人は、何が、と気のない声で返す。世界にはこんなたくさんの国がある。それなのに、その多くに、竜にまつわる伝承とか物語があるんだ。まさか昔、ほんとうに竜が……。言いかけた彼に、友人は体を起こして手をひらひらと振った。そんなわけないじゃん。どうせ、物と一緒に話も国から国に運ばれたとか、そんなんだよ。帰るぞ、と席を立った友人を、彼は慌てて追う。やっぱり考えすぎだろうか、と首を振りつつ。


[ ]