- ナノ -


140
  
 竜はずっとひとりで旅してきた。しかしこのところ、一緒に空を飛ぶ仲間がいる。雨あがりの透き通った空を翔ける、心地よさ。初めて訪れた大地に感じる、胸の高鳴り。共に旅をすることで、そんな感動も分かちあえる。それはきっと、ひとりでしか旅をしたことがなかったなら、知ることのできなかったよろこびだったろう。少し前で翼をはためかせる友に、竜は小さく、ありがとうと呟いた。


[ ]