- ナノ -


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 お願い、歌を聞かせて、と彼女は泣きながら竜に頼んだ。月も星も見えぬ夜、あたりは闇に包まれている。もうどのくらい、彼女はそのなかで涙に暮れていることだろう。やがて、地の深くより響くようなやさしい調べが聞こえてきた。竜が、彼らの言葉で歌を口ずさんでいるのだった。長い時間をかけて、彼女の泣く声は寝息へと変わった。竜は歌い続けた。彼女の夢のなかへ、そっと届けるように。 
 

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