- ナノ -


122

 なんで笑っちゃうんだろう、悲しいのに。なんで平気なふりしちゃうんだろう、苦しいのに。そう言って彼女は涙を流した。竜はじっとしていた。慰めも叱りもしなかった。ただ彼女の傍にいた。みんなといるときも、あなたといるときみたいに、そのままの自分でいられたらいいのに。言の葉も涙のように、彼女の内からこぼれ落ちた。
 

[ ]