- ナノ -


121

 空を見上げてばかりだった頃、いつか雲に触れたいと憧れを膨らませた。翼を広げて少しだけ飛べるようになった頃、はやく雲に追いつきたいと願った。そして、空を流れる雲と並んだ時、雲は掴むことのできないものだと知った。それでも、雲への憧憬は止まない。翼で捕らえられないからこそ、心が捉えられてしまうのかもしれない、と竜は思う。
 

[ ]