- ナノ -


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 どうしてさ、と彼は言った、いつも笑っている人のことを思いやってあげられないんだろう。いつのまにか思いこんじゃってるんだ。あの人はいつだって明るい。だからつらくなんかないんだ、って。意を決したように彼は竜の方を振り向く。もうこれ以上、放ってはおけない。彼女のところへ連れて行ってくれないか。竜はひとつうなずき、彼を背に乗せると、地を蹴った。
 

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