- ナノ -


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 私が来るの知ってたの、と彼女は驚いて言った。竜は首肯する。軽やかさ、歩調、靴の響き。毎日聞いているうちに、彼女の足音がわかるようになったのだ。でもたしかに、と彼女は気づく。私も、はばたきの音で、他の竜じゃなくてあなたが来るのがなんとなくわかる。そうして、彼女はうれしそうに笑った。


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