- ナノ -


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 電撃の力を持つ竜がいた。あまりに強大な力ゆえ、触れた者を瞬時に感電させてしまうほどだった。彼はそれを悲しみ、洞窟の奥深くに身を隠したまま誰とも会わず生きていた。ある嵐の日、ふと、空気に強い雷の気配を感じた。咄嗟に外へ出る。そして、稲妻が森や人の街を焼き尽くさんとするまさにその瞬間、まっすぐ電閃の中に飛び込んで、それを打ち消した。空で激しい力がぶつかり合い、あとには雲ひとつ残らなかった。竜の姿さえも。


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