- ナノ -
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空を翔けることのできるその竜にも、海の中を泳ぐことはできなかった。竜は砂浜に佇み、きらきらと輝く海を見つめる。その下にある世界を目にすることは、これからもない。しかし、竜にはそれもまた、よきことのように思われた。世界の、途方もないほどの大きさと絶望、希望を、思い出すことができるから。
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