59
- ナノ -


59

 落ち葉や雪の季節よりも、なぜか太陽の季節の方が悲しくなっちゃうんだ。積もった雪を竜とさくさく踏んで歩きながら、少女は笑う。竜は後ろを見た。少女と竜の、形の違う足跡が雪の上に残っている。
 夏は、と竜は言った、駆け抜けたことはすべてが記憶になってしまう。だが秋や冬には、まだ先にこれから駆け抜ける大地がある。竜は前に視線を戻した。誰にも踏み締められていない真っ白な雪原が、少女と竜の前に、どこまでも広がっていた。


[ ]