- ナノ -


790

 僕はばかだった、と彼は苦く笑った。その竜と僕は、毎日のように空を飛んでね。でも、ある日突然、竜は去った。ぼくはきみの、空を飛ぶための道具じゃないんだ、って言ってね。
 大好きで、そこにいることも、背に乗せてくれることも、当たり前になってた。ありがとうひとつ、言わなかった。後悔しているよ。許してもらえなくたって仕方ない。
 彼の目が、在りし日の空を見るように、すっ、と遠くなった。


[