- ナノ -


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 他のことを忘れて、ただ夢中になって、少しずつでも向こうの空を目指して飛んでいった。今日どれだけ進んだのか、など考えることもない。そうして積み重ねていった時間と日々が、竜を遥か彼方の空へ運んでいた。ふと振り返ったときに、竜はその、元いた場所がどこかもわからないような途方もない道のりをやっと認識した。遠くまで来ていた。自らも知らぬうちに。


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