- ナノ -


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 道の脇に咲いていた赤い一輪の花を見ながら、人の子は言った。ぼくね。みたんだよ。このおはなから、すっごくちっちゃいりゅうがでてきたの。そうか、と、子の隣の竜は微笑んだ。花竜を見かけたのだな。
 花に宿り、花と共に目覚めるという花竜たち。彼らが住まう地にはよく草花が育つという。またあえるかなあ、と呟く子の足元を、花のように瑞々しい赤い鱗を持つ小さな小さな竜が駆けていった。


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