はないちもんめ

かってうれしいはないちもんめ

まけてくやしいはないちもんめ

あのこがほしい あのこじゃわからん

このこがほしい このこじゃわからん

そうだんしましょ そうしましょ




校庭に響く歌声、まだ数え十の子らが十一人程集まり、無邪気に『花一匁』で遊んでいた夕暮れの事である。

きーまった きーまった


伊助が欲ーしい、はないちもんめ…


声を揃えてそこまで歌い、ふと皆がぴたりと動きを止めた。

其処にいる筈の伊助が居ない。はて、最後に手を繋いでいたのは誰だったか。彼方此方と移動をするうち、何時しか隣にいる者の顔を覚えている者は誰もいなかった。

子らは握った手を離す。そして輪になり話し出した。丁度、誰をとろうかと相談していたさっきのように。

先生に知らせよう。誰かがそう言い、皆が頷いた。

直ぐに大人に知らせに行き、学園の者が総出で捜索を行ったが、伊助は見つからない。夜が明けても、彼が姿を現すことは無かった。

伊助は神隠しに遭ったのだ、との噂が学園中に広まったのは、彼が失踪して三日程経ってからのことであった。

教師らも、それを否定しなかった。初めは曲者の侵入や何らかの事件の可能性を疑ったが、どうにも可笑しい。あの遊びを始めた時には、確かに伊助も其処に居たのだ、と庄左ヱ門は訴えた。きり丸と虎若は、自分達が最初に彼と手を繋いでいた、と名乗り出た。皆がそれぞれの手を繋いでいるというのに、其処から誰にも気づかれず伊助を拐うことなど、不可能だ。まさに消えた、というのが相応しい。

結局、失踪の真相は闇に葬られた。当然、あの遊び、『花一匁』は禁止された。

それから一月程経ったある日の夕暮れのことであった。忍術学園の元に、差出人不明の一通の文が届けられた。其処には、乾いた血のように赤黒い文字でこう書かれていた。

『そのわらしはあちこちの村にて達者に生きておるのにて、何卒魂配致さぬにて願いたもうぞ』





…彼の壺が欲しい 彼の壺じゃわからん

…此の壺がほしい 此の壺じゃわからん

…相談しましょ そうしましょ




ーーーーーーーーーー

怪奇・特殊シリーズの一本目は花一匁でした。

以下、解説です↓

花一匁はその字の通り花をー匁買う買い手と売り手のやり取りを歌ったものが一般とされていますが、様々な説があるようです。私はその中でも人身売買説が好きなので今回はそれをもとにした話にしました。

伊助がいなくなったのは噂の通り神隠しです。夕暮れ=逢魔ヶ時には禍がおこりやすいといわれています。神隠しには遭いやすい性質の人がいるそうです。神経質な子もそうらしいので伊助にしました。

最後の文章は武士の言葉遣いです。武士はあの世の者です。『その子供はあちこちの村で元気に生きていますので、どうかご心配なく。』という内容。あちこちで生きている、というのは伊助のばらばらになった臓器が生きている、という意味です。

そして最後の歌は伊助の臓器を売る武士と買い手のやり取り。私が知る限りどの説も『あの子』なのですが、ここでは敢えて『彼の壺』にしています。伊助の臓器がばらばらに壺に入っている為、『彼の壺』じゃ体のどの部分かわからん、という意味で。

はないちもんめについて、私の知識が全て正しいものではないので悪しからず…。

そもそもはないちもんめは江戸時代の歌だったかも…でも公式でサッカーやバレーがあることだし、そこは軽く流して下さい(笑)

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