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BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -

伊佐敷先輩とないしょ話

「それで…ふふ……ね?おかしいですよね」

「ククッ…ああ…だからさ……」

昼休み3年教室。
たくさん人がいる中で、ご飯を食べ終えた純さんと小さな声でお喋り。
内容はたわいもないこと。
純さんに貸していたラブコメ少女漫画の結末予想を二人で繰り広げていた。
すごく近くだから、純さんの匂いとか呼吸とかドキドキが止まない。

顔が近くてちゅーできそう。

できそうなだけで、できるわけじゃないけど。
あー好き。
楽しそうに笑ってくれてる純さんの笑顔が、かっこいい。
恥ずかしさや照れよりも、今純さんとこうしていられるのが楽しいから意識しないようにしてる水面下。


「…お前らウザい消えて?」


突如降り注ぐのは笑顔の殺意。
あと手刀。
すんでのところで、真剣白刃取り。

「わわっ…も〜亮介さんのヤキモッ、痛ッ」

一瞬止めた亮介さんの手は止まったものの、圧をかけられて下へ落ちた。
もう、本当この人暴力的!
弟の春ちゃんはすっごく可愛い天使なのに!!

「春ちゃんに言ってやる!!」

「バカ言ってねぇで、そろそろ戻んねぇと授業始まんぞ」

「はい!純さん!また遊びにきます!!」

「おー」

「「!?」」

いつものようにそう挨拶すれば、きっと「もう来んなよ」とか「早く戻れ」とか半ギレで言われるのに、まさかの「おー」。
まさかの、「おー」!!
思わず固まった私と亮介さん。

「あ?なんだよ?」

「いや…別に?ほらみょうじ、早く戻りなよ」

「え、あ、…はい。じゃあ、また」

その肯定の言葉だけで、嬉しくて、赤くなってしまった自分がいた。


[ 伊佐敷先輩とないしょ話 ]

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