大会にくれば、他校の観戦、偵察もきちんと行う青道高校のみなさん。
もちろん図々しく私も一緒にいさせてもらう。
みんなの些細な表情を逃さないのが私の使命半分、もう半分は純さんといたいから。
「純さん!席を取っておきましたよ!」
「悪いね、ありがとう」
大きな声で手招きすれば、呼んでいない人が返事する。
もう、この人は本当に…いつもいつもッ!
「なんで亮介さんが座るんですか!純さんとラブラブしながら野球観戦するんですから!あっち行け!!」
「どの口が言うかな?」
「ひたひっひたひィ!!」
笑ってるのに本当こっわい顔。
バカみたいな握力で女の子の頬っぺたを抓るなんて…これは赤くなるどころじゃない!
離して欲しくて、亮介さんの腕を掴んで引っ張るが私の頬っぺが余計に痛いだけだった…。
「うぅー!!はなひぇはなひぇ〜!!」
「あっは!面白い顔。そんな潤んだ目で睨んだって怖くないよ?」
離れたと思ったらバチンと鈍い音を立ててデコピンされた。
「痛ぁッ!…こっの!!」
掴みかかりそうな私と飄々とする亮介さんの間に、純さんが仲裁に入る。
「ダァァァ!仲良く座れねぇのか!!」
「「無理」」
ハモる私たちにため息。
ズキズキ痛むおでこが、この人を嫌いな何よりの証拠!
それでも亮介さんは気にした様子もなく、私が確保していた席に座った。
今日は観客も多く、隙間は空いていても良い席で試合を観るためには場所取りが必須だった。
それを見越して早いうちから控えの選手の人たちと場所取りをしていたので、少し広めの余裕があったから良いけど…亮介さん図々しくないですかぁ?
純さんのために取ってたんですけどぉ!
しかたなく座った席は、私を真ん中に左に亮介さん、右に純さん。
「純さん!どうですか!観やすいでしょ?」
「ああ、そうだな」
「でしょでしょ?!褒めてもいいんですよ?!」
期待の眼差しで純さんを見ていたのに、欲しかった答えも対応も反対側から。
「良い子だね、なまえ」
亮介さんはヨシヨシと私の頭を撫でる。
さっきと違って、その大きな手が優しいのが、なんか…
「なんで亮介さんが撫でるんですか!!てか名前で呼ばないで!!私は、純さんに!撫でられたいの!!」
嬉しくないし。
ぜんっぜん嬉しくないもん。
「お前、本当素直じゃないね、ムカつく」
またふにっと引っ張られる方頬。
けれどそれはすぐに取り払われた。
「うっせぇな!いい加減やめろ!!」
亮介さんの手を払いのけて、私の腕を強く引くものだから思わず純さんの腕の中に………なんてことにはならず
「お前らうるせぇから席変われ」
そう言って、純さんと場所を入れ替わり、左から亮介さん、純さん、私という席順で落ち着いた。
まぁ、純さんの隣ならなんでも良いか!
デレデレした顔を向ければ、純さんが買ったばかりのお茶のボトルを私のおでこに当てた。
ひやりと冷たいボトルの向こうにみえる純さんは優しい。
「冷やしとけ」
「へへ、ありがとうございます!」