短編たち | ナノ
山瀬は悩んでいた。
なにに?
昨日水瀬の姉に言われたことに。
「え、あんたらキスしないの?キスしないの?それって親友なの?」
ちなみに水瀬の姉は確信犯である。
自然にいちゃいちゃな仲になったのはこの人が一枚噛んでいることに間違いはない。
山瀬はべつに水瀬とのキスに戸惑って悩んでるわけじゃない。
しろって言われたら出来そうだ。
ただどれがキスなんだろうと思っていた。
山瀬は垂れ目に常にふにゃりとした笑みを浮かべたへにゃへにゃ系イケメンである。
だからもちろん色々経験済みなわけだ。
初体験は中1で。先輩に食われちゃいました。ちなみに水瀬も中1。同じくお姉さんに食われてます。
だからおっぱいにしたものがキス?それとも咥えられたけどあれがキス?
マウストゥマウスの概念がすっぽり無かった山瀬はどうしようかと悩んでいた。
「うーん、」
水瀬の乳首をしゃぶればいいのか、それとも咥えればいいのか。
それが両方間違ってるなんてだれも教えてくれるわけもない。
「山瀬おはよ」
「もう昼だよ水瀬」
「うん、じゃあおそよう」
「うん、おそよう」
なんてあいさつのようなそうじゃないような会話を遅刻してきた水瀬としながら、山瀬の視線は乳首と股間を彷徨っていた。
「ねえ水瀬、乳首と股間どっちがすき?」
もう聞くっきゃないと思った山瀬はへらりと笑いながら首をかしげる。どうせなら好きな方にしよっと。
周りにいた男女がのけぞる。
なんちゅーこと聞いてるんだこいつ。
電波にしても、もっとこう…!
「いじるのが?いじられるのが?俺いじられるのはあんま好きくない」
「えーじゃあだめじゃん」
だめじゃん姉ちゃん
水瀬キスされたくねえみたいだよ!
周りは絶句。
なんでそんなに冷静なの水瀬
そんでなにがだめなの山瀬
「どっちかでいいからー、」
「なに山瀬、姉貴からなんか言われた?」
なんで山瀬は当たり前のように水瀬の膝に乗るのか。
なんで水瀬は当たり前のように山瀬の頭を撫でて髪に唇を落とすのか。
クラスメイトは慣れ始めていたが、やはり慣れない。
「親友なのにキスしねーの変だって」
「え、そうなの?まじか」
いやいや、しねぇっす。
普通しねえっす。
なんて言えるわけもない。
ハラハラしながら見守るなか、水瀬が山瀬の顎をもちあげた。
「??なに?水瀬」
「親友だからキスしとこ」
「だから乳首かちんこか選ん…っん」
触れるだけの、でも地味に長いキスを山瀬の唇に落とした水瀬はゆっくり微笑んで、また何回かちゅ、ちゅ、と唇を寄せた。
「え、口でいいの?マウストゥマウスあり?」
「たぶん。姉貴にきいとく。」
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