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「でも、長谷くんここから何分かかるの」
その言葉に思わず俯いてしまう。
ここから30分かかるうえに自転車だ。
おっさんの手に出したとはいえしっかりパンツにも放ったものは付いているわけで。さっきから気持ち悪いのもいなめない。
それになにやら俺は一言も喋ったことがなかったはずのこの根暗くんに絶大な信用を置き始めていたらしい。
誰も助けてくれず、あのままでは貞操が危ぶまれた危機的状況。
そこで助けられたというポイントは結構高い。
きまずいものはきまずいけど
「ね、大丈夫だから」
妙にやわらかく耳馴染みのいい声に、なぜ今になって気づいたのだろうと思ったが、そういえばしっかり声を聞いたのは初めてだった。
そんなことをぼんやり考えながら頷いた俺は多分かなり、参っていたのかもしれない。
ひたすら無言に、泣きそうな自分をどうにかおしころして根暗くんのあとを歩く。
根暗くんのいうとおり五分で着いたそのマンションは、こう言ったらしつれいだが根暗くんに似合わないくらい煌びやかで眩しいものだった。
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