短編たち | ナノ
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まず、今日はもともと運が悪かったのだ。ワックスが切れていペシャ、と潰れた髪型のまま学校にいったし学校では捨てられたガムを踏んだもの。
そして極め付けが帰宅時。
いつもはそんなひどくないラッシュが、なぜか今日に限って最強だった。
混んだ電車は香水の匂いやら、おっさんの汗の匂いとか、
匂いに敏感な俺にとってはかなりの悪環境。それだけでゲンナリ萎えていた。
スマホをいじりながら、晩御飯のことを考える。あぁ、カレー食いたい、いやでもドリアとかもいいな。母さんに何作ってもらおう。
そんなことをのらりくらりと考えていると臀尻に違和感を感じた。すりすりと、触れるそれが人の手だと気づいたのはゆっくり振り向いてから。
はげかかったおっさんが、タバコのヤニで汚れた歯を見せてにんまりと笑んだ。
俺は女顔というわけではない。髪だって普通に暗めの茶色を襟足くらいまで伸ばしたくらいだし、身長も平均よりすこし低いくらいだ。
何が言いたいかっていうとつまりまぁこいつは俺を男だとわかっていて痴漢しているわけだ。
でも、男が男を痴漢ってありえるのか、と首をかしげた。悪趣味なやつもいるものだ。まぁ尻くらいなら気持ち悪いが減るもんでもない、と大人しくしていた。
しかしそれが良くなかった。
「っ!?」
受け入れたと勘違いをしたおっさんは、尻を撫でていた手をゆっくり前にまわし、あろうことかそこを握り込んだのだ。
ふざけてんじゃねぇ、と怒鳴りたかったがここは電車。騒ごうものなら他人に痴漢されていることがバレてしまう。
男子のくせにじじいに痴漢されてるなんてバレたら、と思うと口をきゅ、と結ぶしかなかった。
はぁはぁ、と生暖かいじじいの吐息がダイレクトに耳にかかり、気持ちわることこの上ない。
しかもむだにテクニシャンだ。
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