短編たち | ナノ





ふたりとキスマーク


「ん!ったい!」

「はい付いた」


クラスメイトは凍りついていた。
意味がわからないです水瀬くん
意味がわからないよ山瀬くん


「なんだよ水瀬、ここだとあんまり目立たないじゃん」

「あ、ほんとだ。もうちょっと上?」

「はい付け直し」


だからやめなさいって!!


クラスのツートップイケメン電波が昼休みにキスマークを付けあうシーンなんて誰が想像しただろうか

凍りつく教室に響くリップ音

「ん、」

ああああああ山瀬!!
馬鹿野郎!!アホのくせに無駄にイイ声あげてるんじゃない!!


誰の目にもとまるだろう場所に赤い印を付けられた山瀬は満足げに笑って水瀬に抱きついた。

そんな山瀬に覆い被さるように水瀬が体を預ける。

だ、か、ら!!!
なんで抱きつくの!?寒いの!?暖房入ってるじゃん!?ホモなの!?

誰もが真顔で突っ込む中、一人の勇者が立ち上がる。例の水瀬くんと付き合いたい願望を持つ女子である。

「な、なんで水瀬くんたちキスマーク付けあってるの?」


ありがとう、俺たちもそれが知りたかったとクラス全員が空を仰いだのは言うまでもない。


「んー?ちょ、水瀬ぇ、頭にチュッチュすんのストップ」

「ん、なに?」

「キスマークってなに?」

「?キスマーク??」


チュッチュってなんだよぉお!?
そして頭にクエスチョンマーク浮かべるんじゃない!!知らないでマーキングしてたなんて言わせないんだからな!?


「あー、これのこと?」

水瀬がけだるそうにトントンと山瀬の首筋をたたいた。
その行為さえ性的で女子軍はおろか男子たちも顔を染める。
水瀬は悪影響な男である。

「んへぇ、これキスマークっていうらしいね?」

「また新しい言葉知れたね、やったね山瀬」

「うん、やったね水瀬」

「で、なんだっけマムルーク?」

「キスマークじゃねえの?」

「あ、山瀬にベルマークもらうの忘れてた」

「まだ集めてんの?」


見事に話しが逸れていく。
逸らしながら水瀬の手が山瀬の腰にまわり、山瀬はおとなしく引き寄せられるように水瀬に体を預ける。

わしゃわしゃと愛でるように山瀬の髪を撫で繰りまわす水瀬に、山瀬が時々くすぐったげに笑う

そんな山瀬のほっぺたをみて、水瀬はいつも通り美味しそうという感想を持つのだ。

山瀬も水瀬のすこし緩んだ頬にご機嫌さんめ!と謎の感想を持ってご機嫌になる。


「んでなんだっけ、マムルーク?」

「違うよベルマーク」


クラスメイトはこのふたりについて考えることを放棄した。




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