短編たち | ナノ

スーパーセ◯ム水瀬くん

※NLの描写があります。



「最近彼とシてないんだよね」
「うんうん」
「倦怠期ってやつかな」
「うんうん」


放課後、誰もいない教室で。


おきまりの餌付けをされながらガールズトークをされていた山瀬はぼんやりなにをシてないんだろうと考えていた。

それより今日の貢物のカップケーキ美味しいなぁとしか考えられない。なにこれほんと美味しい美味しい

姉ちゃんにも食べさしてあげたいな


「ねぇ山瀬くん、聞いてる?」
「んー?聞いてる聞いてる」
「わたしのこと慰めてよ」
「はーい、よしよし」


アホの子山瀬は一応イケメンである。
ふわふわっ毛に女子よりつるつるした肌にぱっちりした二重


それでも女の子らしい、よりはちゃんと男らしい感もあるのだ。


そんな山瀬によしよしと頭を撫でられれば大抵の女子はコロリと落ちる。別にそんなつもりなくても胸をときめかせちゃうのはしょうがないことなのだ。


例のごとくコロリと落ちた女子が頬を染めて頭を撫でる山瀬の手を掴む。


「山瀬くん、もっとちゃんと慰めて欲しい、なんて」

ぷるぷるした唇を可愛らしく突き出して、バサバサとコーティングさせたまつげをパチリパチリと上下させて、女子は山瀬に顔を近づけた。


「慰めるって、なにしてほしいの?」


アホの子山瀬だが、何度か経験すればある程度のことは学ぶ。
なんどもこんなことがあればさすがに目の前の女の子がなにを求めているのかわかるようになるのだ。


「めんどくさいのやだからセックスは今回限りね」

女の子の顎に指を這わせて山瀬は笑う。
その笑顔がどんなに妖艶であっても、山瀬の脳内には今しがた完食したカップケーキのことしかなかった。

……あれもう一個くれないかな


ちなみに慰める、という名目で山瀬が女の子を抱くのは時々起こる。珍しいことではない。


カッコいいしキスしたいし抱かれたいけど電波だから付き合いたいとは思わない
顔だけ付き合いたい
顔と体が好き

もう一つ理由があるがここではまだ伏せておこう。

以上が全女子の山瀬への思いである。
まぁつまり外見はいいけど中身がダメ、というわかりやすい意見。


「うん、えっちして、山瀬くん」

あー、あのケーキもう一個食べたい
ヤッたらもう一個くれないかなぁ
まぁなんでもいいけどさ

どうでもよさそうに目線をそらしながら山瀬は手を滑らせる。そういや最近ご無沙汰だったな。


「山瀬くん、わたしのおうち、くる?」


山瀬に耳朶をふにふにと触られてながら女の子は潤ませた目で山瀬を見上げる。

そこにカップケーキはあるんだろうか。あるんだったら走ってでも行きたいんだけど。


「んー、行ってあげてもいいけ、…ッン」


うわー、久しぶりのチューだ。
女の子の唇って柔らかすぎてなんかやなんだよねー。
押し付けられたぶにぶにの唇。
ついでにぶにぶにの胸。

家くる?とか言ってた割になんでここでいろいろ始めようとしてんのかな

まあなんでもいいけどさあ


「、んぁ、山瀬くぅん、ちゃんとしてよお」
「はいはあい」



めんどくせえなー。
やっぱこの子の家いかないでここでやってから水瀬の家行こっと。

全く動かす気もなかった舌をめんどくさいなあと思いながら山瀬はゆっくり動かした。

情け程度に手でゆったり胸を揉む。


「山瀬くん、そんなんじゃ足んないよお」
「はいはい」


あーやべ、わりとほんとにめんどくさい。
どうしよ、さっさと終わらせるか
つーかもはやヤりたくないかも

情け程度の行為をしながら山瀬はどうでも良さそうに目線をずらした。
そして教室の入り口に目を向けて、怠そうに細めていた目を大きく見開いた。



「AVみたいなこと言う人ってほんとに居るんだね」
「へえ水瀬ってAV見んのー?」
「あんま見ない」
「今日のご飯なに?」
「姉貴にきいて」


わあ、なんか水瀬怒ってる

壁によっかかってこちらを見ていた水瀬はいつも通りの平坦な声だが、目がいつもより冷たく光っていた。
鈍いことで有名な山瀬ですら気付くくらい水瀬の機嫌は悪かった。
可哀想なのは女子である。
突然の水瀬の乱入に頬を染めるが、当の山瀬は気にする様子もなく水瀬と会話を始める。


「え、あ、ちょ、山瀬くん、?」
「んー?あーごめん、今日やっぱもう帰っていい?」
「え?え?」

外しかけた女の子のシャツのボタンを丁寧に直しながら山瀬はふにゃふにゃした笑顔を女の子に向ける。

そんな笑顔で言われてしまったらしょうがない。こくこくと首を縦に振って、頬を染める。

山瀬はなかなかに残酷である。




「んじゃ水瀬くん帰ろっか、」

「山瀬、」


身支度をして教室の出口に駆け寄った山瀬を見て、水瀬はやっと口元を緩めた。
そんな水瀬を見ながら山瀬は「やっぱり水瀬ってきれいだなあ」とアホみたいに感嘆して、

そんな山瀬を見ながら水瀬は「犬みたいだなあこのマリモは」と髪の毛をかき混ぜた。


ついでにいつもの習慣で水瀬は山瀬のおでこに唇を落とした。


「ねえ水瀬ってAVは何系みるの?」
「犬系」
「なにそれー」



女子たちが山瀬と付き合いたくない理由

二つ目は

「山瀬には強力なセ◯ムが付属している」

という点であることをこの2人は知らない。




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