魔王。ふにきゅあになる。

 日曜の朝。魔王が来てから土日のどちらかは休みをもらっている五条は久々の休日にベットで微睡の中にいた。しかし、それは魔王により壊された。

「おきよ!よは!ふいきゅあになるぞ!!」
「は?」

 五条の上に飛び乗りしたり顔でそう告げてきた。五条は突然上に飛び乗られた衝撃、そして、理解が追いつかないことを言っており目を白黒させる。
 魔王はそんなこともお構いなしに、「おきよ!」と五条を起こしてくる。

「ねむいから、あとでね」
「よのいうことがきけんのか!」
「うん、はいはい」

 自分の上で騒ぐ魔王をベットに寝転ばせ、腹部をリズム良く、優しく叩いた。うるさいなら一緒に眠らせてしまおうと言え作戦である。魔王は不服そうに「ふいきゅあになのるのだ」というが、段々と瞼が閉じていき寝息をたてていた。
 魔王が朝早くから五条を起こすのは日常茶飯事で、寝たい五条はよくこうして魔王を眠らせていた。夜も然り。この推定4歳児の魔王は基本は元気だが、暖かくなったり、お腹がいっぱいになったり、遊び疲れると眠ってしまう子どもであった。


 暫くして魔王が目を覚ますと、隣には五条はおらずキッチンから良い匂いがただよっていた。

「おはよう」
「うむ、おはよう」

 魔王はまだ半分目が覚めていない様子であったが、自身が眠らされた事実を思い出すとはっとした表情をする。

「よは!ふにきゅあになるのだ!!」

 そして、再び五条に告げた。五条はこの子ども何を言っているのだと、魔王のつぎはふにきゅあかと面白くなっている。

「またまた
「みていろ!よのへんしんばんくを!!」

 魔王はふかふかのソファのうえにたつと、どこからともなくコンパクトを取り出した。

「ふにきゅあ!くるりんミラーチェンジ!」

 ぱかりのコンパクトを開けそう高らかに声をあげた。五条はどうせ子どもの遊びだと少し早いお昼ご飯にと作ったフレンチトーストに齧り付いた。
 足元に幾重にも魔法陣を展開させる。そして、コンパクトから眩しいくらいの光があふれ出る。魔王が変身バンクと自称するだけあり、来ていた寝巻きから衣装チェンジしたのである。
 ワイシャツにベスト、短パンは全て黒で統一され、赤いリボンタイの真ん中には同じ色の石がはめられている。足元は素足だったはずがごつごつとしたブーツに変わり、魔王が肩に触れるとふわりとマントが現れる。

「よるやみをすべる!きゅあサタン!」

 魔王はどや顔で決めポーズを決めた。その横には女児アニメに出てくるマスコットキャラのようなピンク色をした羊のような生き物が浮いていた。

「まじ??」

 五条は思わずぽかーんと口を開けた。そして、フレンチトースト置き魔王に駆け寄ってきた。魔王の脇に手を入れ持ち上げくるくる回る。

「どうだ?すごいか?」
「すごい!なに、それどうやったの?」
「ふふん!よは、まおうぞ??まおうぞ??これくらいとうぜんである!」

 魔王は自慢そうに笑う。五条は魔王を下ろすと、魔王の側でふわふわと浮いてるピンク色の羊を突いた。

「なになに?このふわふわ??」
「メ"ェェェ!!!」
「それは、アスモデウス!よのはいかである。ぷにきゅあにはマスコットがひつようだろう?だから、よんだのだ」

 つんつんと五条をアスモデウスと名付けられた羊を突くと同時にアスモデウスは声で鳴いく。魔王はアスモデウスと名を呼ぶとふわふわと近づいてきたのでそれを捕まえ、手でもふもふと触った。

「よんだ??」
「うむ。よがよんだのだ」
「名前って、式神も使えたの?」
「しきがみ?はよくんからんが、じんをかいたぞ。なんたって、まおうだからな!」
「そっか

 五条は学んだ。魔王が魔王を自称するのは全部流すことにした。魔王はぽふんと音を立て元の寝巻きに戻った。

「あれ、戻っちゃったの??」
「つかれたのだ」

 魔王はソファーに座りながら、黒い大きい毛玉を呼び出しそれに寝転んだ。毛玉は鳥みたいな見た目をしていた。
 五条はあっと思いついたように、魔王を小脇に抱え、地下の駐車場に向かうと止めてあった車に放り込んだ。魔王はチャイルドシートに座らさせれ少し不服そう。

 車で向かったのはアパート。魔王の見た目年齢よりも8歳上の少年の家。みてみてと呆れた様子で魔王を前に置いた。魔王はその期待の眼差しに応えるべく、きりっと表情を変え、高らかに声を上げる。

「ふにきゅあ!くるりんミラーチェンジ!」

 足元に魔法陣が展開され、先ほどと同じように衣服が変わっていく。先ほどよりも短いのは、初回はフルサイズというアレである。

「え?」
「よるやみをすべる!きゅあサタン!」

 魔王のドヤ顔も炸裂した。
 突然そんなものを見せられた少年はぽかんと口をあけていた。すごいとでも言って欲しそうな顔で五条と魔王は少年を見つめ、呆れた様子ですごいすごいとだけ答えた。

「む、めぐみ!もっと、素直に褒めるべきだ!よがついにふにきゅあになったのだぞ!」
「いや、そもそも、なんでふにきゅあ?普通ライダー系じゃないのか?」
「よがおなごのようにあいらしいからだ!それにふにきゅあをあなどってはならんぞ。あれは、じょじあにめのりょういきをこえているのだ」

 きゅるんと大きな瞳をさらに丸くし、ぶりっ子ポーズをする魔王。少年こと伏黒恵は、似たもの親子めと呆れてしまう。
 伏黒は魔王と五条が実際に血が繋がっていることは知らない。むしろ、息子と紹介され今まで認知してなかったのかこのクソはと軽蔑の眼差しを向けたほどだった。

 五条も五条で「こんなにかわいいのにね」と親バカのようなことを言っていた。
 だが、すぐにふにきゅあモードは疲れるといい魔王は術を解いてしまう。この能力が実用化されるのはまだ先なのかもしれない。

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