01

 虎杖くんを送ってから数日後。私たちの営業もいつもと同じ1日に1、2組ほど客が来ればいい方だった。むしろ来ない日だってあるくらい。そろそろ新しい本でもと思い、外へ出たのはいいのだが、買いすぎた。
 つい興が乗ってしまったのだ。古本屋から始まり、大型書店へと色んな所を巡っていたらこうなった。店員さんがドン引きしていたし、なんなら送って貰えばよかったと後悔すらしている。両脇に置かれた茶色い紙袋は二重にして貰ってはいるが、破れてしまいそうなほどの重量。

 転移させてしまってもいいのだが、人通りの多い駅前で力尽きてしまった。もう持ち上げる元気も動く気力もない。ベンチに座り、ヘルプを求めてようと連絡をするが、彼には繋がらない。どうせ、寝ているかパチンコにでも行っているのだろう。
 どうしようかと頭を悩ませていたところに救世主が現れた。私にはその存在が神のように見えたのだ。

「名前さん?どったの?」
「虎杖くん、丁度いいところに。今、お時間ありますか?お願いしたいことがありまして」

 神様仏様虎杖様。中にいるのはヤバいお人だがそんなものは関係ない。後光がさしてみえる。
 私はかくかくしかじか、これこれうまうまと状況を伝える。そして、なんと彼はアルカイックスマイルで「いいよ!」と二つ返事。ほんといい子すぎる。そのうち悪い大人に騙されてしまいそうで不安を感じてしまう。私のような胡散臭い大人の言うことを信じてしまうなんて。

「今から名前さんのお店行こうと思ってたから全然!」
「おや、そうでしたか」
「ほら、前に友だち連れてっていいって聞いたでしょ?その友だち連れてきた」

 彼の後光でよく見えなかったが、よく見ると彼の後ろには男の子と女の子が1人づつおり、私のことを怪しいものを見るような目で見てくる。どの世界でもこの見た目と声は怪しいんだね。知ってた。
 それにしても虎杖くんは私があれほど苦労し、挫折した紙袋を軽々と持ち上げてくれたのは流石としかいいようがない。彼も甚爾と同じゴリラ族なのではないだろうか。いや、それは虎杖くんとゴリラに失礼だね。

 虎杖くんに紹介された男の子。伏黒くんは本当に彼にそっくり。私が出会った頃と同じくらい、いやそれよりも若いだろう。出会った時は既に成人済みだったようだし。親類なのだろうか。彼、自分の家族のことはあまり話してくれないから気になってしまうのは仕方がない。

 本当に楽しみだ。…色々と。

 私はそっと弧を描いた。

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