五条の坊ちゃん高専編

 恵が小学生に上がる頃には、俺は高専で教鞭を取っていた。夜蛾に頼まれて仕方がなく体育の教師をしていた。
 基本定時上がりで、地下室の隠し部屋ででだらだらとサボっている。この地下室は俺が学生時代にこっそり作ったもので、甚爾が使っていた以外誰も使用していなかったが、掃除をしたり、家具等を整えてやればすっかり住めるようになった。
 それを五条の坊ちゃんに見つかってからはよく入り浸っていた。

 この猫みたいな坊ちゃんは、未だに人にのしかかって来るし、構ってもらわないと拗ねて、構えばどっかに行く気分屋っぷり。

「はらへった」
「なんか適当に食えよ」
「作れよ」

 仕方がなく立ち上がると、カルガモの親子のように後ろをついてくる。無駄にでかい図体でじっと後ろから眺めてくる。
 俺は簡単に炒飯を作ってやると嬉しそうに食べていた。

「ほらとっとと食って買えよ。五条の坊ちゃん」
「俺はいつまで坊ちゃんなわけ?」
「お前が子どものうちは坊ちゃんだな」

 むすっと頬を膨らまして、あざと可愛いアピールをしていた。
 ちなみに坊ちゃんがここに来る時は、同級生の夏油と喧嘩した時も逃げてくる。喧嘩して仲直りすればいいところを逃げてくるのだ。


 しかし、俺がここに入り浸ってることを知った甚爾は恵を連れて、やってくる。恵は随分と叔父さんっ子に育ってしまい昔の五条の坊ちゃん並にひっついてくる。そのように甚爾は何故か微笑ましそうに見ているのが不思議である。

 甚爾と五条の坊ちゃんの仲は相変わらずで、顔を合わせればすぐに喧嘩している。何がそんなに気に食わないのか。相性の問題なのだろうなとは思うが、10年くらいの仲なのにそろそろ学べばいいと思う。
 まぁ、俺がギャンブル辞められないのと一緒かね。

「だから、なんでいるわけ?お前関係ねぇじゃん」
「はぁ?俺は仕事できてんだよ」
「子連れでか?」
「恵の訓練も兼ねてんだよ。んなことぐらいわかんだろ。クソガキ」
「あ?」
「やんのか?」

 売り言葉に買い言葉。もはやヤンキーのそれである。いい加減仲良くしろよなと思いつつも、俺は恵と一緒にゴールデンタイムのアニメを見ていた。

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