04

黄金主2
 俺は暫く任務に行かなくていいとだらだらしていたら、サボりすぎと競馬場で五条の坊ちゃんに捕まった。今回は久しぶりに五条の坊ちゃんが同行するらしい。この最強は自分が楽したいのか、自分が出たら一瞬で終わるようなものを押し付けてくる。
 呪霊も祓い終え、帰りの車で思い出したかのように口にされる。

「あ、今度一級の昇級査定受けてもらうから」
「俺、一生三級でいいから大丈夫」
「もう決まったことだから、無理」

 俺は楽したい。働きたくないをモットーに生きているのである。三級から上に上がりたくない。それなのにコイツはにやにやにと口角を上げて笑っている。

「大体、そーいうの推薦だろ?俺、推薦もらえるほど頑張ってねぇよ」
「最近はほとんどお迎え来てもらってるもんね」
「そんな奴が一級にしようなんて頭大丈夫??」

 俺はそう言いながらタバコを蒸した。

「ま、もう決まったことだし。名前なら特級もなれるよ」
「んなもんお断りだね」

 俺は今頭の中でどうやれば逃れられるのかを考えていた。ブチるか。

「サボっちゃダメだよ

 そう言ってこずかれた。
 どうやら見逃してくれる気はないらしい。


ーー10月31日 渋谷にて。


 俺はパンダと一緒に一級の日下部さんに査定を受けていた。

「なぁ、俺帰っていい?」
「普通にダメだろ」

 下の敵は五条の坊ちゃんが、祓ってくれるらしい。もし逃げてきた奴を祓うのが役割らしい。それにヒカリエの地下にごろごろ特級もいるとのこと。

「やばそうになったら呼んで。パチ屋いってる」

 俺は立ち上がりひらひらと手を振りその場を去ろうとしたが、捕まってしまう。

「一応任務だってわかってる?」
「分かってるっての。でも、こんだけいたらなんとかなんだろ」

 俺は元の場所に戻され、パンダにクマのぬいぐるみに抱えられる幼児みたいな形で捕まり待機らしい。


 渋谷の建物内を探索するらしく、俺はその後ろをダラダラとついていく。俺は最後尾を歩き、ゆっくりゆっくりと気配を消して逃げ出した。

ーー昇級なんてしたくねぇんだよ。

 逃げ出し、空いてるパチ屋はないかとふらふらと散策する。その時、何気なく通った路地で恵の脱兎を見かけた。呪詛師にでも追われているのかと、野次馬根性で後をつけるとその後ろ姿に、声に覚えがあった。

「オマエ名前は」
「…?伏黒」

 思わず、口に咥えていたタバコが落ちる。

「甚爾…?」

 自身の頭に游雲を突き刺そうとしていた腕がぴたりと止まり、俺の声に振り返る。俺の記憶の姿から少し歳をとった姿をしており、なぜ、ここにいるのかがわからない。俺の予想ではとっくの昔に死んでいると思っていた。それなのに、なぜ、生きているのだろう。
 そいつは俺に駆け寄り、そのまま俺の鳩尾に渾身の一撃をかましてきた。

「名前!!」
「かはっ…」

 口から唾が飛ぶ。俺を殴ってきた張本人はその馬鹿力で俺を抱きしめてくる。

「人を殴る時は加減しろっつたじゃねぇか!!」

 俺はそう言いながら、頭突きを喰らわした。腹を押さえながらふらりと立ち上がった。腹も頭も痛い。

「うるせぇ、勝手に死ぬテメェが悪い」
「へーへー、わるぅござんした」

 頭突きを喰らわしたのに諦めもせず、抱き寄せてくる。肩口が冷たく感じるもの仕方がないゆるしてやる。ちらりとみやると恵が不思議そうにこちらを見ている。

「あれ、お前の息子だろ?」
「…たぶん」
「多分ってお前なぁ…」

 俺はそのままの状態から抜け出せず、なんとか体勢をかえ、その状態のまま恵の方に歩いていく。

「どういう関係だ?」
「簡単に言えば大昔にコイツの子守してたんだよ」
「は?」
「まぁ、ちゃんと話せば長くなるから、これ終わってからな。つか、でかいコアラのけてくんない?」
「無理だろ」

 目を白黒させている恵はどういうことなのか分からないような顔をしている。
 俺にのしかかってるコアラを押しのけると気が済んだのか、離れてくれた。

「約束破りやがって」
「あ?約束?遊園地か?」
「ちげぇよ、五条のあれ」
「あー、なんか約束したな」

 俺は頭の中の古い記憶を掘り出した。
 五条の坊ちゃんのしけたツラ見に行くとかいってたっけ。といってもあの坊ちゃんは今はまだマトモなつらしてるのだが。

「仕方ねぇなぁ。今、箱に封印されてんだってよ。拝みにいこうぜ」
「おう」

 俺は昔のように甚爾の頭を撫でてやった。少し気恥ずかしいそうだが、満足気に笑う。そっと、俺は甚爾に式神を仕込んだ。
 甚爾は犬にお手を求める飼い主のように手を出してきた。

「あ?」
「刀」
「えぇ…」

 俺は口からずるりと出したお気に入りの刀を渡すと満足そうに口角をあげた。

「恵。家入さんのとこいけっか?」
「あ、あぁ」

 甚爾ちやられた傷を簡単に止血してやりながら、そう言った。
 そういけば、なんで息子の存在忘れてたんだろうか。真面目くんがそんなことあるのか、見た目も生きてたらアラフォーだろうしなんが若いのも気になる。

 まぁ、いいだろう。後でゆっくり聞けばいいか。

 俺はそう思いながら、再会の喜びに浸った。

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