03

 甚爾が東京の高専に進学すると、フリーになった俺に今まで溜め込んだ分と言わんばかりの任務が舞い込んできた。
 その中で1日だけ五条の坊ちゃんの面倒を見たことがあったが、大人に抑圧されしけたツラをしていた。他人の家の子どもなので、近くで競馬中継を聴くくらいしかすることがなかった。

 甚爾とは任務で会うことも殆どなく、一度だけ被ったが、甚爾のパンチでなんとかなった。流石すぎる。

「なぁ、甚爾。今度、五条の坊ちゃんのしけたツラ拝みに行こうぜ」
「そんな、ファミレス行こうぜくらいの軽いノリでいける場所じゃないだろ」
「つまんねぇなぁ」

 煩いと甚爾にこずかれた。
 今思えば、それがこいつとの最後の会話。

 本来であれば、二級の討伐任務だった。すぐ終わる仕事。階級が上がる要素もないはずだった。それなのに、俺の目の前にいる呪霊は特級クラス。式神も消耗してしまい、残っているのはひじかたくんだけ。

「ひじかたくん、逃げろ」
「俺はダメだ、甚爾を守ってやれ」

 自分の式神を調整する。急拵えだが、大丈夫。俺が今この状態になっているのは、きっと、はめられたから。なら次に狙われるのはあの子だ。彼をおきたくんと一緒に守ってくれと願いを込めて式を飛ばした。

 さて、最後の切り札だ。

 こう言う時、ジャ○プの主人公なら逆境を乗り越えて生き延びるのだろう。だが、残念。俺は主人公ではなく、サブキャラ。だから、ここでお前と共に死んでやるよ。

 カチリとライターに火をつけ、タバコに煙を灯す。ゆっくりと味わいながら吸い込み、煙を吐き出す。俺の煙は呪霊を縛り付け、動きを一時的に封じた。

ーーそれでいい。
ーーそれでいいんだ。

 俺は口角を上げ、忍ばせてあった手榴弾とピンを抜いた。ただの手榴弾じゃない。呪具であり、俺の呪力をめいいっぱい流し込んだ。つまり、まぁ、爆破オチってやつだ。爆破オチなんてサイテーなんていうなよ。

 心残りがあるとすれば、H×○の連載開始を拝みたかった。

 目を閉じると、俺の意識は爆破と共に一瞬で消え落ちた。



 次に俺の意識が覚醒した時。D○レが、まだジャンプで連載をしていた。そして、H×○は例の如く休載をしていた。
 俺はその事実にそっとジャンプを閉じた。

ーー大きくなったら、ワン○ースとジ○ジョとドラゴ○ボール、ス○ダンを揃えるぞ。

 そう決心した。
 後ろから俺の双子の弟が早く行くぞと促してくるので、今度は買いに来るからなとジャンプを棚に戻しそちらに向かった。

ーーーー2007年 宮城県 某所にて。

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