02

 それから数日後。そいつは俺の家に現れた。帰宅したら俺の部屋に我が物顔でベットの上に寝転がっていた。家にいたはずの母が何も言ってこなかったあたり口止めしていたのだろうか。
 そいつの手にはおもちゃの指輪を手で遊びながら、俺が帰ってきたことに気がつくとおきあがった。

「おかえり」
「た、ただいま?…じゃなくて、なんでいる?!住所なんて知らないはずだろ?」
「お前の親が送ってた年賀状みてきた」
「……そう言えば、当主サマだったな」

 肩から鞄がずり落ちてそのまま床に落下した。諦めたようにその場に座り込む。

「なんの用だよ、この前のあれは断ったろ?」
「お前に拒否権なんてねぇの」
「拒否権がなくても、上が黙ってないだろ…」
「そんな腐ったみかんのことなんてしらない。俺が嫁にするっつたらお前は嫁になるんだよ」
「だから…」

 俺が続きを紡ぐ前に顔が近いた。つい先程まで離れていた距離がぐっと縮まったのである。それは一重に向こうが近づいてきただけだったのだが、急に目の前に顔があり思わず後退った。唇と唇が触れ合いそうな距離で俺の視界は彼の顔しか映らない。

「御託はいいの、クソジジイ共はほっとけ。お前はどうしたいワケ?」
「…おれ?」
「まだ、ガキんときの指輪もってるのはなんでだよ」
「それは…」

 どうもこうもない、俺は呪術師ではない。それに俺よりもお前がどうするんだ。
 グルグルと頭の中で言葉だけが空回る。結論なんて何も出なくて、口にだせない。

 そっと腕で彼を遠ざける。

「…考えさせてくれ」

 顔を背け、そう告げる。

「ダメ、今すぐ言え」

 そう言われた瞬間時が止まる。実際は僅か数秒の沈黙。それが何分にも何時間にも感じてしまう。
 とくりとくりと規則正しくなる心臓が段々早く鼓動を刻む。こくりと唾を飲む見込む音だけが鮮明に聞こえな気がした。

「……俺は、男だし、お前も男だ。お前は五条家の当主で、跡継ぎを作らないといけない。正直、現実は厳しいと思う」
「そういうのいいから」
「…でも、あの頃の思い出に縋ってたのは、ほんと」

 俺は一呼吸置いて、青を見据える。サングラスに隠されていてもその瞳は宝石のように輝いていた。

「俺のこと惚れなおさせてみろよ、当主サマ?」

 そう告げると、一瞬目を丸く見開くもすぐに表情を戻し、口角を上げる。

「覚悟しとけよ、あだ名ちゃん」

 この時、俺は選択肢を間違ったのかもしれない。だが、後悔したところで意味をなさなかった。

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