13.「開放感」

「終了!ほらーもう解答書くなよ!」

今日でようやくテスト期間が終わり放課後から部活が再開される。
前回は色気もねぇ野郎どもと赤木の家で勉強合宿したが、今回は名字と一緒に勉強した。
元々馬鹿じゃねぇ俺だ。
教え方さえよけりゃ、スースー頭に入ってく訳で名字のお陰もあって今回は赤点を取る心配はなさそうだ。

ホームルームを終わると、俺はカバンを持ちすぐさま体育館へと向かった。
なんせ、1週間ぶりにボールに触れれると思うとウズウズして仕方がねぇ。
早くボールに触りてぇ。

向かう途中、宮城と会い声を掛けた。

「よぉ、宮城。」
「・・・三井さん。」
声を掛けたはいいが宮城は浮かない顔をしていた。

「なんだ?その顔はよぉ。まさか赤点濃厚とかじゃねーだろうな?」
「・・・。」
俺はニヤリと笑いからかうつもりで発した言葉だったが、どうやら図星だったらしく宮城は黙り込んでしまう。

「おいおい、冗談でいったのにまさかホントか?」
「・・・そういう三井さんこそ頭悪い癖に。」
「はぁ?なんだテメェ。俺はなグレる前は成績良かったんだぞ!一緒にすんじゃねぇ!!」
「・・・どーだか。どうせ三井さんも勉強なんかしてないでしょ?」
「おいおい。俺の事なんだと思ってんだ!勉強ならしたぜ?名字と。」

俺が名字と勉強をしたと言ったらこれまで暗い顔をしていた宮城の顔は嘘のように明るくなった。
なんだかニヤついているようにも見える。

「ふーん。三井さんが名字さんとねぇ・・・。で、どこで勉強したんすか?」
「あ?俺の家でだよ!」
「家?!まさかついに・・・」

俺の言葉を聞いた途端、どうやら宮城は自分の世界に入ったのかニヤついたり赤面したり忙しないほど表情が変わる。
なんだなんだ、コイツは。急に表情をコロコロ変えやがって。分けわかんねぇ。と俺が怪訝そうな顔をしていると、宮城が今日一番だろうニヤついた顔で聞いてきた。

「したんすか?」
「は?したって何を。」
「そりゃ、男女2人きりですることなんて1つしか・・・」

宮城の言いたいことをようやく察し、俺の顔は見る見るうちに赤くなっていく。

「ば!バカヤロウ!!!そんなことする訳ねーだろ?!」
「ホントっすか?赤くなってるところを見るとますます怪しい・・・」
「そもそも、俺と名字はそういう関係じゃねぇよ!!」

俺たちが話していると
「ミッチーは鈍いからな」と後ろから声が聞こえ振り返った。
そこにいたのは桜木で、俺たちと並んで歩き始める。

「な、花道もそう思うだろ?」
「そうだともリョーちん。」
「だよな。三井さん鈍いからなぁ」
「お、俺は鈍くねぇ!!!」

そう俺がいうと2人して「はぁ。」とため息をつく。
たく、俺は先輩だぞ?馬鹿にしやがって。
後で見てろよ?この赤点野郎め。テストが帰ってきたらオメーらの前で高笑いしてやるぜ。
そう心で呟くと体育館へと到着する。


「「「うーっす」」」
「「「ちーっす」」」

既に来ていた1年達はモップ掛けを始めている。
またいつもの日常が戻ってきたのだなとシミジミ思った。

着替えを終えた俺は部室からでてストレッチを始めた。
だからその時、部室で俺の話題で盛り上がっていたことを俺は知らなかった。

「おい、リョーちん。ミッチーと何話してたんだ?」
「あ?お前聞いてたんじゃないのかよ。」
「途中からだ。したとかしないとかその辺り。」

桜木はロッカーを閉めるとベンチに座って宮城の話を聞く。

「そこからかよ。あのな、どうやら三井さんと名字さんは一緒に勉強したらしいんだ」
「ほぉ。勉強を」
「しかも三井さんの部屋で2人きりだったらしい。」
「2人きり・・・」
そう桜木がいうと、顔を赤くした。

「な?絶対なにかあるだろ?なのに三井さんはなんもねーっていうんだよな。絶対嘘だろ」
「2人きり・・・晴子さんと2人きり・・・」
「?ん?おい、花道?どーした?」

桜木は想像が自分と晴子が2人きりで部屋にいるビジョンに変わってしまったらしく、もう宮城の声は届かない。

「さて、練習しよっと」
宮城は桜木を置いたまま部室を後にした。

***

ストレッチを終えてボールに触る。
やっぱり俺にはバスケしかねぇんだ!!!
そう呟きながら1週間ぶりに打った3Pシュートはきれいにゴールへと吸い込まれていく。

「おしおしおーし!!!」

今日は調子がいいぜ!!!
試合だったらいい感じに点数稼げそうなコンディションだな!!
これもすべて名字のお陰だな。心配事がねぇのはホントにいいもんだと思った。
今頃テスト勉強に勤しんでいるだろう名字の顔を思い浮かべ笑顔でシュート練習を続けた。


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