7日の彼女;stage of the conviction 後編

俺たちは湘北の面々と着替える場所が一緒だった。

ブーブー

誰かの携帯の着信音が鳴り始める。
だが誰も出る気配がない。

「おい、メガネ君。携帯なってるぜ?」
桜木は、音の場所から主を探し出した。
後から部屋に入ってきただった湘北の小暮の携帯だった。

俺は、着替えを終えてロッカーを閉めようとすると携帯のランプが光っているのに気づいた。
確認するとメールで相手は名字さんからだった。

「藤真君。教員試験合格したよ!」
とシンプルなメールが届いていた。

「よかったな!おめでとう」
俺は素早く返事を返した。
そうか、合格したか。本当によかった。
それからの俺は上機嫌だった。

メールを返し終ると俺は体育館へと向かう。
牧と少し話をしていると、赤木と小暮が嬉しそうに会話をしながら体育館へと戻ってきた。

「なんだ、嬉しそうだな。いいことでもあったのか?」
「ああ、牧。いやな、俺の知り合いが教員試験に合格したって電話があって」
「そうか、神奈川の試験の発表は今日だったか。」
「そうなんだ。いやーほんとによかったよ。な、赤木」
「そうだな。あいつも喜んでたしな。」
「へー結構教員試験受けてるやつ多いんだな。」
「藤真も受けたのか?」
「いや、俺も友達が今日結果出てさっきメールで合格したって来たところ。」
「そうか。藤真の方もよかったな。」

***

チーム分けをクジで行うと、各チームで軽くミーティングを行う。

「それでは試合を始めます」

相田の声で試合は始まった。

前半、それぞれ慣れないメンバーとの連携が合わずミスもしたが10分もすると慣れてきたのか徐々に点を重ねるようになった。
元メンバーや、現メンバーで一緒の組んだことのある面々などのスーパープレイが炸裂したりと、紅組39−白組42で前半を終える。
後半が始まってすぐはどちらも入ったら入れるの繰り返しだったが、徐々に点差が縮まっていき結果は紅65−白65で同点であった。

「なんだぁ。同点か!!」
「いやー久々にアイツらと試合が出来て良かった。」
「ほんと、透すごく楽しそうにプレイしてたよね!」
「いや、俺よりも藤真のが生き生きしてたぞ?」
「確かに。藤真がかなり生き生きしてた」
「そうかな?なんか、妙にハイテンションなだけじゃない?藤真の癖に」

俺が仙道と話して花形達の所に着いたとたん、浅海の”藤真の癖に”とう言葉だけ聞こえてきた。

「なんだ。また浅海は俺の悪口でもいってたのか?」
「誰も悪口何て言ってないわよ。ただ、藤真が生き生きしてたって透と長谷川君がいうから、私は妙にハイテンションなだけって言っただけよ」
「なんだ。そうか。」
まぁいつもの俺ならここで言い返している所だが、今はすこぶる機嫌がいいからな。
わざわざ浅海とのゴタゴタに自ら足を入れなくてもいいわけだな。
だけどその様子が3人には不思議だったようで・・・”なんか藤真が変だ”と口をそろえていた。


すると湘北の面々たちが何やら騒がしくしていた。
何事だろうと俺たちは近づいていく。
あいにく赤木・桜木・流川が盾になっていてあいつ等よりも背の低い俺には何が起こっているかは、相当近づかないと分からない。

「よかったな。教員試験合格して」
「おめでとう。」

どうやら、先ほど小暮がいっていた教員試験を合格したという人が現れたのであろうか。みんなその人に祝いの言葉を伝えている。
すると流川がカメラマンの元へ行ったことによって、間が空きその人物を見ることが出来るようになった。
その人は俺から見ると後ろを向いていて顔は分からない。
けど、どこかで見たような後ろ姿だった。

「ホントにありがとうね。公延、赤木君、それにみんな!」
そういってあたりを見回したその人の横顔が見えた。
俺は、その姿をみて目を見開く。

「名字さん?」
そう。そこにいたのは名字さんだった。
なんでだ?なんでここにいる?
俺が誘ったの断ったよな?
なのに赤木や小暮が誘うのはいいのか?

「藤真。やっぱり名字さんのこと誘ってたのか」
「・・・いや、俺じゃない。」
「え?」
隣にいた花形は、当然俺が誘って来て彼女が来たと思って聞いたんだろうな。

「・・・花形。俺、帰るわ。」
「え・・・?お、おい!藤真!!」

俺はここにいたくなくて荷物をロッカーから引っ張り出すと着替えもしないでそのまま体育館を飛び出した。
後ろから花形や長谷川の声が聞こえたけどそんなの今の俺には対応できる自信がない。
でもなんでだ?なんでなんだ?
冷静に考えてみれば、別に知り合いだっていってた奴らに誘われて、彼女は来ただけなのになんでこんな気分になるんだ?

その時、俺は花形に言った言葉を思い出した。
『まぁ、別に名字さんのこと気にならない訳じゃないんだ。ただ確信が持てないからな・・・』

ただ確信がもてないだけ・・・。
俺は何ふざけたことをいってるんだ?
もう前から答えは出てるんじゃないのか?

そうだ。俺は彼女のことが・・・。

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