7日の彼女;stage of the effort

彼女と電話で話していた時、たまたま見かけた張り紙に書かれていた夏祭りのことを思い出し、
夏祭りあるんだよって話をしたら、じゃあ一緒に行こうという話になった。
そして今日がその夏祭り当日。
時計を見ると約束時間を指していて、そろそろ来るはずだと内心ワクワクしながら、俺は人でごった返す駅前で彼女のことを待っていた。

「藤真くん、お待たせ。」
後ろから声を掛けられて振り返る。
彼女は、淡い紫色の浴衣を身に纏い普段下ろしている髪はキレイに結ってそれが妙に色っぽく見えて・・・
お陰で俺は彼女に見惚れて直ぐに返事が出来なかった。

「藤真君?」
「・・・あ、いや。なんでも。それじゃ行くか!」
「うん。」

俺たちは並んで話をしながら夏祭りの会場へと向かう。
周りも皆、夏祭りに行くのか周りは人だらけで、少し油断したら逸れてれしまいそうな感じだ。

『すみません』
彼女が誰かにぶつかった。それを見た俺は彼女を抱き寄せた。

「ふ、藤真君?」
「危ないから。俺の方寄って?」
彼女は少し顔を俯けるとコクリと頷いた。


***

暫く歩いていくと、会場に近づいたのか道の両側には出店が並んでいる。
わたあめに、たこ焼き。リンゴ飴に焼きとうもろこし。
多くの出店の中で俺たちはカキ氷の屋台の前で足を止めた。

「名字さん、カキ氷でも食べない?」
「あ、いいね!食べようか」

そういって俺は、店員にいちご味と抹茶味を注文すると、
出来上がったカキ氷を受け取りイチゴ味を名字さんへと渡す。

「ありがとう。あ、藤真君抹茶なんだね。」
「ん?甘いのあんまり得意じゃなくてさ」
「そうだったね。この前パンケーキ食べた時も甘くないのだったよね」
「そうそう。」
「確かに藤真君って、メロンとかブルーハワイより抹茶のが似合うかも!」
「え?そうかな?」
「うん。今日の浴衣も和柄ってのもあるかもだけど」
そういって彼女は微笑んだ。


俺たちは歩きながら花火を見るためによさそうな場所を探し
適当な場所に座るとカキ氷を食べながら花火が始まるのを待っていた。

ヒュルルル  ドン!!

「あ!花火始まったね!」

大輪の花をような花火が空へと打ちあがった。

「まさか、藤真君とこんな風に花火を見ることになるとは思ってもみなかったよ」
「俺もだよ。」
「高校の時はほとんど話したこともなかったのにね」
「そうだな。まさかこんな風に出かけたりするようになるなんてな」
「ホントだよね」

そういって俺たちは顔を向けると笑い会うとまたお互い花火を見る。
俺は、ふと彼女の横顔を見る。
空に咲く花火をまっすぐ見つめる彼女の目は、澄んでいてとてもキレイだった。
すると、彼女の結っていた髪が少し崩れる。
俺は咄嗟に彼女の髪へと手を伸ばすと、急に髪を触られた彼女は驚いたのか肩をビクッとさせた。

「・・・藤真君、どうしたの」
「髪、崩れてる。」

彼女は巾着の中に入れていた小さな手鏡を出し自分の髪を見ると、
あっ。と小さく声を出し挿していたかんざしを取ると口に咥えると、
肩に落ちた髪を手で纏め始める。

その姿を見て俺はドキっとした。
なんか今日は名字さんにドキドキしっぱなしな気がする。

「藤真君、教えてくれてありがとうね」
髪を元に戻すと彼女は笑顔で俺にそう言ってくれた。

***

花火が終わる少し前に、俺たちは帰るために来た道を戻り始める。

「夏祭り、楽しかったね」
「ああ、来てよかったよな」

行きの時よりも少し近い俺たちの距離。
時々お互いの手がぶつかった。

「あ、ゴメンね。藤真君、手・・・」
彼女がそう言った時、俺は咄嗟に彼女の手を握った。

「え?」
「逸れるといけないから」

俺がそういうと彼女は先ほどと同じように少し顔を俯けるとコクリと頷いた。

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