7日の彼女;stage of the love 前編

藤真が部屋から出ていった後、俺もその後に続くように藤真の部屋を後にする。
外に出るとさっそく飛鳥に連絡をした。

「あ、もしもし飛鳥。懇親会は?」
「透、遅いよ!今、終わったところだよ?」
「そっか。他の奴らはまだいるか?」
「うん。まだ話してるから暫くみんないるんじゃないかな。」
そうか、まだみんないるのか。それなら名字さんも残ってる可能性は高いな。

「飛鳥、悪いんだけど長谷川と一緒に湘北の近くにある市立図書館の前で待っててくれないか?」
「え?なんでわざわざ?」
「ん?藤真の邪魔をするわけにはいかないからな」

***

俺は走って湘北へと向かっていた。
正直、懇親会はもう終わってるだろうし名字がいるかもわからない。
けど、俺の足は止まることはなかった。

湘北の体育館の近くに行くと既に人の話し声は聞こえず、ダメもとで体育館のドアを開けてみる。
するとそこには

「ん?・・・誰?あ!藤真君。」

彼女の姿があった。

「名字さん、ちょっと話・・・「名前お待たせ!」「待たせて悪かったな」

俺が名字さんに声を掛けているとタイミングよく赤木と小暮が部室から出て来た。

「あれ?藤真、さっき帰ったんじゃなかったのか?」
「あ・・・いや。」

そういい俺は名字さんを見る。
するとその視線に気づいたのか小暮は、

「名前、俺と赤木は急用が出来たんだ。悪いが、帰りは藤真に送って貰って」
「え?さっき・・・「いいから、いいから」
そういって名字さんの背中を押すと、俺に笑顔を向けてきた小暮。
どうやら俺の言いたいことを悟ってくれたのか、名字さんと話ができるようにしてくれた。

「悪いな。」と赤木と小暮に声を掛けると俺と名字さんは一緒に外に出た。

***

「小暮。今のは・・・」
赤木は状況が読めず藤真たちが去った後、小暮に聞いた。

「やっと名前の恋が叶う時が来たのかな?」
「そうか・・・ようやくか。」
「もう7年だもんな。」
「そうだったな。あの高1の決勝リーグの試合の時からか・・・」
「よくここまで片思いしてたもんだよな」
「小暮、それお前がいうことか?」
「はは。そうだな。俺なんて幼稚園の時からだもんな。」
そういい小暮は笑った。


その頃、俺と名字さんは

「藤真君・・・」
「名字さん、悪いんだけど少し行きたいところがあるんだ。付き合ってくれない?」

体育館を出て歩き出すと、すかさず声を掛けてきた名字さんに、俺はそういって2人その場所へ向かっていた。

***

「ここって・・・」
俺の向かった場所は、翔陽の教室だった。

当時俺が座っていた席に座ると、名字さんも思い出したかのように自分の席へと座った。
俺は窓際から2列目の前から3番目。名字さんは窓際の前から4番目の席だった。
俺は名字さんの方を振り向くと

「懐かしいよな。」
「そうだね。何年振りかな?もう4年か・・・」
「早いよな。」
「そうだね。ほんと早いね」
そういって2人で笑った。

「・・・それで藤「俺さ、実は高校の時名字さんのこと気になってたこともあったんだぜ?」
「・・・え?うそ・・・。」
「ホントだよ。」

俺の言葉を聞くと名字さんはすごく驚いた顔をしていた。

「後ろ向く度にさ、俺、名字さんのこと見てたの知らないだろ。」
「知らない・・・。」
「だろうな。いつも名字さんは外を見てたから。」

そう言うと俺は笑った。
俺は彼女の窓から景色を見ている横顔に惹かれたんだ。

「・・・藤真君。そのいつから・・・」
「ん?高校3年かな。」
「そっか。じゃあ、私の方が先なんだね。」
そう笑っている彼女の言葉に、今度は俺が驚いた顔をした。

「私が藤真君のこと気になってのが先なんだよ。」
「・・・え?・・・いつから?」
「高校1年の夏かな。」
とにかく驚いた。
まさか名字さんが俺の事をそんなに前から思っててくれたなんて。

「あれは、県立体育館で開かれた決勝リーグの試合だったかな。私は公延と赤木君と翔陽と海南の試合を見に行ってたの。
実はね、私、中学の時はバスケ部のマネージャーしててね。
翔陽ではマネージャーは男の子しか募集してなかったから、久々に見たいと思ってた時、2人に誘われてね。」

「そう・・・だったのか。」
知らなかったな。まさか名字さんがあの試合に来てたなんて。

「藤真君とはクラスも一緒だったけど話したことなかったでしょ?だから少し藤真君の事、誤解してて。
けどね、バスケの姿をみて違うんだなって。すごく努力して輝いてる人なんだなってわかったの。
それからどんどん藤真君の事、目で追うようになってて、いつの間にか凄く気になる存在になってたんだ。」

そういうと彼女は俺から顔をそらし窓から見える景色を見ていた。

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