俺がここに来たことを思い出す。
そんな日だった。

5.Love Candle

みちるさんが日本へ帰ってから3ヶ月過ぎていた。
俺はみちるさんのことを忘れたくてますますバスケにのめり込んでいた。

だいぶ吹っ切れてきたある日、久々にジョージから電話があった。
「おお、彰か?」
「ジョージさん。久しぶりですね」
「ああ!久しぶりだな。そういえばみちるは日本に帰ったそうだな!」
「あ、はい。それで、なにかあったんですか?」
「おっと、そうだった。実はな、明日日本から留学生が来るんだが俺がどうしても時間の都合で迎えに行けないんだ。だから悪いんだけど、彰。迎えにいって貰えないか?」

ちょうど明日はOFFだし、特にやることも決まってなかったため、俺は引き受けることにした。
「じゃあ、場所はこの前のタクシー乗り場で待ち合わせだから。後で彰に詳細をメールするよ」
そういってジョージは電話を切った。

暫くすると、メールが届いた。
それを開くと、「・・・名前 名字名前」みちるさんと同じ名字だ。
まぁ珍しくもないからな、居ても不思議じゃない。

俺はジョージからもらったメールを閉じると、明日も早いし寝ようと思いベットへ入った。

***

次の日、俺は空港に居た。
約束の時間より早く着いてしまった俺は懐かしい。そう思いながら空港内を歩いていた。
すると地図をもってうろうろしている女の子がいた。
どうやら困っているようだ。

「どうかした?」
「なんで、日本語・・・」
「君、日本人でしょ?俺も日本人だからね。」
「それで・・・」
「で、道に迷ってるの?どこに行きたいの?」
彼女は俺に問われて地図を見せてくれた。

「ここなんだけど・・・」
「ああ、このタクシー乗り場ね。ここ、工事が終わって今は別の場所なんだ。案内するから着いてきて」
俺が歩き始めると、彼女は小走りで俺の隣にやってきた。
なんだか、俺が初めてアメリカに来た日を思い出すな。

「あなた背が高いのね。スポーツでもやってたりする?」
「ああ、バスケだよ。」
「そっか。こっちに来たのはバスケのため?」
「うん。1年前にね。」
「そうなんだ。こっちは日本よりも広いし、ほんとわかりずらいね。」
困ったように笑う彼女の横顔がみちるさんに少し似ていた。

それから話しているうちにタクシー乗り場についた。

「ここだよ。」
「すみません。助かりました、ありがとうございます。」
そういって頭を下げる彼女に、じゃあね。と言って俺は来た道を歩き出した。
すると、ジョージから電話がかかってきた。

「もしもし。」
「あ、彰か?俺だ。ジョージだ」
「ああ、ジョージさん。どうしたんです?」
「いや、昨日いけないって話しただろ?だけど前の用事がキャンセルになって行けることになったんだ。」
「あ、そうなんですか」
「だから迎えは大丈夫だ!悪かったな。」
「いえ、いいですよ」
俺は、既に空港についてたけどそれをジョージには言わなかった。
さーて、せっかく来たんだしブラブラして寮に帰るか。
そう思い俺は再び歩き始めた。

***

なんとか、空港であった親切な人のお陰でタクシー乗り場に着くとコーディネータを探すためキョロキョロする。
すると目があった恰幅のいいオジサンが私の方に向かって来た。

「you and アルファベットで名前?(お前、名前か?)」
「Yes.it's I.(はい。私です。)」
「I'm George.the coordinator.(俺は、コーディネーターのジョージだ)」
「Then do you go?(それじゃ行こうか)」
握手をした後、ジョージに促されタクシーに乗り込んだ。

「すまんね。まさか場所が変わってるとは思わなくて。」
「いえ、大丈夫ですよ。たまたま親切な人と出会えてその人に案内してもらったんです。」
「そうだったか。よかった。」

それから色々車内で説明を受けながら、私は外の景色を見ていた。
日本とは違う道、違う景色。
ようやく離れられた日本。
これで、これでようやく私は一歩踏み出せるんだ。


学校につくと担当の先生の所に連れていかれ、挨拶を済ますと寮へと向かった。
「名前、ここが寮だ。ルームメイトはアメリカ人だが、この寮には日本人もいる。」

寮の玄関の前で、話していると私たちの隣を一人の男性が通り過ぎた

「おお!彰!ちょうどよかった!」
ジョージがその男性に声を掛けた。
すると、その男性は振り返る。
あれ、空港で会った・・・。

「ジョージさん。久しぶりですね。」
「彰、今日は悪かったな。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
「そうそう、彼女だ。今日、彰に迎えを頼んだのは」
そういい、ジョージが私を紹介すると・・・

「あれ、君、空港で・・・」

彼がジョージさんに事情を話すと、
「あはは!まさか、名前がいっていた親切な人が彰だとは驚いたよ」
「たまたまですよ?彼女が道に迷ってたから声を掛けたんだ」
「はは。それじゃ、俺のお陰かな?」
「そうかもしれませんね。」

そういい彼が目じりを下げて笑うと私の方を向いて
「俺は、仙道彰です。よろしくね。」
「私は、名字名前です。よろしく」
そういって出されていた手を握り握手をした。

これが、私と彼の出会いだった。
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